うつの軌跡(5回休職した銀行員の復職体験記)

とある銀行で働いていた私は、ある日、うつになりました。5回の休職&3度の自傷行為を経験しながら、復職に向けて必死にもがいていた日々の記録を書き連ねていきます。このブログは「こうすればウツが治る!」ということは書いていません。経験者誰もが強く実感する通り「うつ病を治す魔法の杖はない」のです。それでも自分の体験(特に躓きやすいところ:うつの地雷)や向き合い方をシェアすることで一人でも多くの方の参考になればいいな、と考えています。

【2】<体験記>たたかいのはじまり-2

2011年1月下旬のとても寒い朝のことです。

窓から、白く柔らかい日差しが差し込んでいた記憶があります。

 

前夜、不眠が酷くほとんど眠れていない状態でしたが「会社に行かないと…」と重たい身体を無理やり起こして顔を洗いました。そしてワイシャツに着替えてネクタイをしようとしたのですが、その瞬間、「不出来な自分は会社に行ってはいけない」という強い感情の奔流が生じ「無能な自分を罰しなければいけない」という思考が爆発しました。

 

気が付くと、私は自身の身体を刃物で傷つけていました。不思議と痛みは感じずに、夢の中にいるような他人事のような感覚でした。

 

それからの記憶は途切れ途切れになります。自分で救急車を呼んだのだと思いますが、よく覚えていません。救急から連絡されたのでしょう、刑事の方も来られていました(後で知ったのですが、事件性の有無を確認する必要があるのでこうした場合は警察がこられるのです)。事情を聞いた刑事さんが悲しそうな顔で「こんなことをしても何の解決にもならないよ」と言ったことを朧げながら覚えています。

 

私はすぐに救急病院に搬送されました。道路を走行中、救急車がガタガタ揺れていました。傷を縫合してくれたのは女性医師でしたが、手術後に彼女から「30針以上は覚えていません!」と強い口調で叱られました。ただ内臓に達するような深い傷はなし、とのことでした。手術室を出ると警察から連絡があったとのことで所属部署の次長が2名来ていました。何か会話したはずなのですが、ここの部分は記憶が抜け落ちています。

 

記憶にある次の場面は、自宅に戻ってベッドの上に横たわっていたことです。次長が傍についていてくれました。数時間ほどして身内が駆けつけてくれて、その日は終わりました。

この件に関わったすべての人に途方もない迷惑と心配をかけ心底申し訳ないのですが、その時の私は「これでようやく眠れる…」と変な安堵感を感じていました。完全に思考が破綻していたのです。

 

<追記>

自傷行為は絶対やってはいけないのですが、ここではあえて記載しました。こうなる前に心療内科・精神科などに通院しておくべきでした。この行為は実際の傷の大小に関わらず身近な人・大切な人に心配させてしまい、そしてその後の自分自身にも大きな暗い影を落とします。

どんな理由をつけても良いです、そうした思いが少しでもある人は絶対に思いとどまってください。愚かな行為を繰り返してしまった私の心からのお願いです。