うつの軌跡(5回休職した銀行員の復職体験記)

とある銀行で働いていた私は、ある日、うつになりました。5回の休職&3度の自傷行為を経験しながら、復職に向けて必死にもがいていた日々の記録を書き連ねていきます。このブログは「こうすればウツが治る!」ということは書いていません。経験者誰もが強く実感する通り「うつ病を治す魔法の杖はない」のです。それでも自分の体験(特に躓きやすいところ:うつの地雷)や向き合い方をシェアすることで一人でも多くの方の参考になればいいな、と考えています。

【10】<閑話休題>退職、そして転職活動

なかなかブログの更新ができておらず申し訳ありません。年末から風邪⇒角膜炎⇒腰痛コンボでダウンしたり、1月から開始した転職活動が思いのほか忙しくご無沙汰しておりました。

書きたいことは山のようにありますので、また時間を捻出してブログを更新していきます。2017年2月末に退職した後、実家にて療養と気力回復のための諸活動(寺社仏閣巡り、スポーツジム、読みたかった本を読む、好きなゲーム三昧…)をしており、結構ブランクがあきました。転職したい企業に応募をかけていますが、スキル不一致やブランクがネックになり、なかなか七転八倒の毎日です。それでも銀行を退職したことに一切の後悔はありません。

馬車馬のようにバリバリ仕事をしていた時期はとても充実していましたが、鬱病で何もできなくなった以降は人生の最悪期でした。不眠で頭が朦朧としている中、出社して無理やり仕事をして帰るときには本当に動けないくらい厳しい状況をずっと続けてました。帰り道、吐き気をこらえながら道路沿いを歩いていて「今、車道を走ってくるトラックの前に飛び込んだら、一切の苦しみから解放されて楽になれるよな…」といったことばかり考えていました。そんな自分が嫌で嫌で情けない思いでいっぱいの日々でした。

退職したことで将来的な収入や生活の保障を失いましたが、それでも私は普通に笑って暮らせる生活を望みました。今後転職する先は、恐らく収入的には以前の職場の半分以下になると思いますが、あのまま周りに迷惑をかけながら自分がボロボロに壊れていく姿を見ることは何より辛かったです。

そうはいってもやはり「退職」するという決断は人生において非常に大きな分岐点です。私も他の人には簡単にはお勧めできません。いまこの瞬間も復職や再発防止に向けて大勢の方が自宅やリワーク、そして職場で奮闘されている現実があります。そうした方にとり、私自身の失敗の経験やそこから得た考え方をお伝えすることで、僅かでもヒントになるようなことを書き連ねていきたいと考えております。

どうぞ今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。

【9】<参考>休職期間の過ごし方-6(STEP2「回復期」スポーツジムの活用方法)

※風邪でここ数日寝込んでおり、記事の投稿が遅くなり恐縮です。今後もコンスタントに続けていきますので温かい目で見ていただくと幸いです。

それでは続いてスポーツジムのご説明です。

No. 活動 内容 メリット
2 スポーツ
ジム
エアロバイクやマシンで運動する。 ●中程度の運動を行うことで体力の回復を図り、気分もスッキリする。

 「回復期」の活動としてスポーツジムをどのように活用するのかをご説明します。

 

1.概要

「スポーツジムってお金かかるし、通うのが面倒じゃないかな…」 

そう思われる方も多いのではないのでしょうか?確かに基本的にスポーツジムは有料がほとんどです(民間運営だと月額7,000~10,000円、自治体運営だと一回300~500円というのが相場だと思われます)。決して小さくはない金額ですし、特に休職期間中は収入が減少しておられる方が大半だと思われますので迷われるのが当然だと思います。お金のかかる活動なので「絶対これが復職には不可欠です」なんて事は言いません。あくまでご参考レベルでお気軽にお読みください(当ブログのメインテーマです)。

まずは私自身がスポーツジムでどのような運動を行っていたのか、そこからご説明します。以下は実際に私が運動していた時のジムでの流れです。

 10:00~10:10 入館・スポーツウェアに着替え・ジムエリアへ移動

 10:10~10:55 エアロバイク(45分)

 10:55~11:10 マシントレーニング(15分) 

 11:10~11:40 入浴 

 11:40~12:00 着替え・退館

トータルの時間としては約2時間(正味の運動は1時間)です。それでは上記の運動を行うことで、どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

 

2.推奨理由

(1)汗を流す運動が自分のペースで実施できる。

「ジムに行くんだからあたりまえじゃないか、わざわざブログで書くほどのことか?」そんな声が聞こえてきそうです。ただここは私見ですが<最大のメリット>だと考えています。元気に職場で働いていた時も含め、貴方はこの直近10年間で定期的に汗をかく運動をされたでしょうか?働いていると平日はそんな余裕(時間・体力ともに)はないし、休日は寝て体力を回復させたいから運動しないという方が多いですよね。私もそうでした。

ご注意願いたいのはウツの治療に運動が必要だと言っているのではありません。現に私も某所のリワークで週一回、かなり強度の高い筋トレプログラム(90分)があり「これは復職に向けて何の役に立つんだろう…?」という不満がありました。人に強制される運動ほど無価値・無意味なものはないと思います。 ←ここは私の信条です

ただ、自分の経験および納得性のあるウツ関連書籍を整理すると「汗をかく運動をすることは血行を良くして気分の維持向上に役立つ」という事が言えます。誰しも適度な運動するとスッキリしますよね。あの気分を継続して味わうことが目的です。運動はウツの根本対策ではないですが、サポート的な対策であると私は考えています。前置きが長くなりましたが、じゃあどれくらいの運動をすべきか迷うと思います。大前提として貴方の体力はかなり低下しています。そのような状態でハードなマシントレ等を行うと十中八九、極端に疲れてジム通いが嫌になります(私も経験したパターンです)。「休職しているから早く復帰できるように精一杯体力づくりを頑張らないと…」回復期にありがちのウツ思考パターンですね。

私のお勧めは、まずはエアロバイクだけ、それも15分一本勝負です。それ以上の運動は止めておきましょう。エアロバイクは足への負荷を調整できるのでちょっと抵抗を感じるくらいの負荷にします。それでペースはゆっくりで良いので15分間、漕いでみてください。おススメは運動しながら好きな音楽をスマホ等で聞きながら実施することです。思ったより汗をかいてビックリされると思います。

※チビクロメモ:汗拭き用タオルを持参して漕いでる間、頭にかぶってみましょう。発汗を促すとともに周りが気にならない効果もあります。あと5~10分おきの水分補給をお忘れなく!

もし負荷が軽いな、と思われたら少しずつ負荷をあげてみましょう。15分では運動し足りない、そう思っても最初はここまでにしましょう。大事なのは「汗をかく運動を自分のペースでやる⇒運動による気分の良さを感じ、同時に基礎体力を少しづつ回復させること」です。慣れてきたら運動時間を15分単位で増やしてみましょう(MAX45分くらいが毎日続けるコツだと思います)。数週間してエアロバイクだけでは物足りない方は軽めのマシントレを入れてみるといいと思います。

(2)一日の流れを作る効果&費用対効果

朝はスポーツジムで1時間くらい過ごす!そう決めると、毎日の生活リズムが徐々に規則正しくなってきます。ずっと寝たきりの生活をしていると生活リズムが乱れますよね。やがて来る通勤訓練、その先にある復職を見据えて生活リズムの面を徐々に整えていくという面からも毎日通えるジムは有効だと考えます。

【ご注意!】ウツの症状に「日内変動」という症状があります。一般的には「朝、起床時が最も気分が沈んで、夕方・夜に向けて徐々に気分が持ちなおす」ことです。上記では体調やメンタル面である程度回復された方を想定して朝のスポーツジムと書いてますが、朝はどうしてもシンドイ方も多いので、お昼過ぎや夕方のジム通いでも構わないと思います。

またコスト面でも実はジムはメリットがあります。月額10,000円のジムと仮定して平日20日間で割ると一日あたり500円ですね。図書館等の無料の公的機関は別として、1~2時間過ごせてそのお値段は喫茶店でコーヒー飲むことなどと比較しても価値があるのではないか、そう考えます。極論すれば別に運動しなくたって大きな風呂でリフレッシュする、という考えでもよいと思います。ちょっとしたスパ気分ですね。さらに新規入会で入会金無料キャンペーンや時間帯制約(平日日中のみ使用など)をつけることによって料金が割安になって使用できるジムも多いので調査してみる価値はあると思いますよ。

 

3.注意事項

さあ、ここまで見てきました。じゃあ「スポーツジム」にはウツ地雷はないの?残念ながらあるんです…私見ですが下記の通り整理しました。ご参考になると幸いです。

(1)近隣のスポーツジムだと近所の人にバッタリ会って気まずい思いをするリスク

スポーツジム経験のある方はご存知かと思いますが、現在、スポーツジムのメイン顧客層は近隣に住む中高年の方です。退職後にジムでの運動を日課にされてる方やダイエットに励まれる方を多く目にします。ご自宅の近隣のスポーツジムだとそうした近所の人とバッタリ会う機会も相応にあります(散歩の注意事項と同じロジックです)。気にされない方はいいのですが、私を含め気にする人は気にしてしまいます。通う体力や交通費の面はあるのですが、もし可能なら電車で一駅、二駅くらい離れたジムの方が完璧ではないにしろ、そうしたリスクを抑えることができるでしょう。

 

(2)スポーツジムの有料オプションはよく考えましょう

スポーツジムを初めて利用される方には、最初にジムスタッフから施設の利用説明があります。それは必要なことなので良いのですがその際に色々な有料オプションを勧められるケースが多いです。具体的にはシューズロッカー、レンタルタオル、水素水(大手のジムでも結構、積極的にセールスしてて驚きました)、ジム内でのケガを保障する保険等。もちろん、全部不要という気はありません。例えばシューズロッカーを借りておけば結構重量のある靴を毎日持ち運ばなくてもよくなりますよね。ただここで注意喚起したいのは、ウツ症状がでていると物事(ここではセールス)を断りにくくなる傾向がある、ということです。皆が皆そうであるとは言いませんが、誤解を恐れずに一言でいえば「弱気になりやすい」です。ジム会費だけでも結構な出費なので、その有料オプションが本当に必要かどうか良く検討する(持ち帰り検討でいいと思います)ことをお勧めします。あと付け加えると、ネットでジムを調べて即契約ではなく、必ず一度は施設内部を見学することをお勧めします。Webの写真では綺麗に見えても実際に行ってみると風呂が汚かったり、マシンが古かったりということはあります。

 

長文になりましたが、「スポーツジムの活用方法」についてご説明しました。次回は皆様お待ちかね(?)の「動画配信サービスの活用方法」です。

 

以上

【8】<参考>休職期間の過ごし方-5(STEP2「回復期」たかが散歩、されど散歩)

 

それでは回復期の活動候補の中から、”散歩”についてみていきましょう。

No. 活動 内容 メリット
1 散歩 家の近所などを散歩する。 ●軽度の運動であるため無理なく始められる。費用もかからない。
●日光を浴びることで生活リズムを整えられる。

 

1.概要

「散歩することに意味なんてあるの?」

そう思われる方が大半ではないでしょうか?でも「休養期」を終えてすぐの身体は貴方の想像以上に基礎体力が落ちています。元の体調に戻そうとしても一般的なスポーツの類は相当難易度が高いと思った方がよいでしょう。そもそも外出すること自体が億劫に感じる状況なのです。かといって自宅でインドアの趣味や作業ばかりやっているといつまでたっても基礎体力は回復しません。

そこでハードルの比較的低い活動として散歩を挙げます。別に遠くに出かける必要はありません。最初は家の周囲をぐるっと回って帰ってくるだけで良いです。久しぶりに屋外の空気や降り注ぐ日光を感じてみてください。少しでも気分が良くなってきたら、次の日もまた出かけてみましょう。歩くことは人間の基礎体力維持に直結しているため、とても重要なのです。

 

2.推奨理由

私が散歩を推奨する理由は以下の通りです。

(1)外出することで自宅(または自室)に籠ってばかりの生活から脱却できる。

(2)1日15分でも歩くことで基礎体力回復の第一歩が始められる。

(3)途中で辛くなったら、いつでも中止できる。

(4)日光を浴びることで人間の体内時計がリセットされ規則正しい睡眠に繋がる。

    ⇒以下のサイトが参考になりますよ

business-life.jp

3.注意事項

「じゃあ散歩っていいことばかりだね!」

OK、ちょっとお待ちください。健康な状態ならそうですがウツという病気は思わぬところで地雷を用意しています。私の実体験等から得た注意事項をピックアップします。

 

(1)散歩中に近所の人に会って「お休みですか?」と声をかけられ答えに窮した

自分がウツで休職していることはなるべく他人には知られたくない、という感情は必ず出てきます。ましてや近所の人というのは今後も継続的に関係が発生します。「どのように説明したものか、ウツであると説明するのは恥ずかしいし…」と困ってしまうケースもあります。近所を散歩するときは、上記のような質問に対する当たり障りのない理由を予め考えておいた方が気楽に散歩できます。また最初は土日に散歩してみる、というのもグッドですね。

 

(2)道を歩いているスーツ姿のサラリーマンを見て気分が落ち込む

「そんなことはないだろう…どんな豆腐メンタルなんだよ」と思った貴方はウツ症状の理解がまだまだと言わざるを得ません。この点は実に多くのウツ経験者が語っています。私も外でサラリーマンを見かけると「彼らは立派に働いているのに自分は休職しており情けない」という思考をして落ち込みました。最初は通勤時間帯は避ける、大通りなど人の多い道はやめておくなどの対策をお勧めします。やがて復職準備期で行う通勤訓練の前準備として徐々に慣らしていくのが得策です。

 

散歩については以上です。「たかが散歩、されど散歩」というサブタイトルの意味がご理解いただけたのなら幸いです。まずは散歩する習慣ができれば、体力・気分の面から他の活動にも着手しやすくなりますよ。

 

以上

 

【7】<参考>休職期間の過ごし方-4(STEP2「回復期」何をすればいいの?)

当ブログをご覧いただきありがとうございます。

それでは「回復期」の過ごし方(活動)を見ていきましょう。このステップでの目的は以下の一点です。

 【目的】「気力・体力」を徐々に回復させる

気力・体力の回復ってどうやったらいいの?皆さん、そう思われると思います。私もそうでした。でも、難しいことではないのです。自分が少しでも楽しいと思える事を実行することや、ちょっとした運動などを通してそうした力は少しずつ回復していきます。さらにそうした活動は「ストレス解消」という大きな効果も持っています。復職後に向けて今からストレス解消の方法を複数ストックしておくことは再発防止の助けになります。では具体的な活動を考えてみましょう。

「回復期での活動」を選ぶにあたり私は以下の5点が判断基準であると考えます。

  ①無理をせずに始められる

  ②自分が楽しいと思える

  ③継続的に実施できる

  ④コスト面で無理がない

  ⑤自分が辛いときはいつでも中断できる。

特に③と④については休職期間中のみならず、復職後においても継続していくにあたり重要なポイントです。

上記を踏まえて私がお勧めするのは下表の活動です。

No. 活動 内容 メリット
1 散歩 家の近所などを散歩する。 ●軽度の運動であるため無理なく始められる。費用もかからない。
●日光を浴びることで生活リズムを整えられる。
2 スポーツジム

エアロバイクやマシンで運動する。

 

●中程度の運動を行うことで体力の回復を図り、気分もスッキリする。
3 動画配信サービス Netflix等の動画配信サービスで映像コンテンツを楽しむ。 ●好きなジャンルの映画やドラマ等をいつでも楽しめる。
●月額1000円程度の定額制で使用可能。
4 ゲーム 好きな家庭用ゲームを楽しむ。 ●好きなジャンルのゲームをいつでも楽しめる。
●ゲームに集中することで余計な思考を抑える。
5 音楽 好きな音楽を聴く。 ●気分を上向きにさせる。
●音楽を聴くことで余計な思考を抑える。

 

以上をご覧になられていかがでしょうか?何も特別な活動ではありませんよね。むしろ健康な人も普通に実施している趣味ばかりです。ただ、当ブログで上記を取り上げるには理由があります。数度に及ぶ休職の中で私は様々な趣味やストレス解消法を試してきました。その中から前述の5つを推奨するには相応の理由があります。

なお上記以外の活動を否定するものではないことにご留意下さい。当然ですが、人の趣味は実に様々です。他に自分にあったものがあるよ、というのも至極正しい考え方だと思います。

次章から個別の活動について概要・推奨理由・注意事項について説明します。

 

<補足!>

ウツについて色々と情報収集されている方は、上記の表を見て「リワーク(復職サポート施設)」の記載がないことに疑問を持たれるかもしれません。復職準備期の前段階としてリワークには相応のメリットがありますが、実は注意すべき点も複数あるのです(これはリワークに実際に通ったことのある人、かつ複数のリワーク経験者でないとなかなか見えてこない観点です)。そのため、リワークについては別途、解説する章を設けるつもりです。

 

以上

 

【6】<参考>休職期間の過ごし方-3(STEP2「回復期」基本的な考え方)

それではSTEP2を見ていきましょう。

 STEP2:回復期

(目安 2~3か月)

 

仕事から離れ、十分な睡眠による休養を経たことで精神状態は最悪の時期を抜けているはずです。「何も考えられない」といった状態はかなり改善されていると思います。ただ、少しでも考える余裕が出てくると今度は「自分は復職できるのだろうか?」という不安を覚える方も多いと思います。

ここで注意していただきたいのは「焦る必要はない!」という事です。数か月~数年に渡る仕事での過度なストレスは貴方本来の色々な能力(判断力・集中力・忍耐力など)を大きく蝕んでいます。また必要とはいえ長期間の睡眠中心の生活を続けたことにより身体的な耐久力も著しく低下しています。そして何より大切な「生きる上での気力」ゲージがほぼゼロになっていることを正しく認識する必要があります。

最悪のシナリオは、焦って復職を急ぐあまり「集中力や気力が低下したまま」「ウツになった原因およびそれへの対処方法を検討せず」に会社に戻り、再びウツ病になって再休職してしまうことです。これがウツのもうひとつの怖さです。原因への対処がないままだと、かなりの確率で再発する危険性があります(ウツの再発率については別途、取り上げます)。まずはご自身の状況を見定めて、そこから復職への戦略を立てましょう。以上を踏まえて、回復期の初期状態を考えてみると私自身も経験し、また他のウツ経験者の方からもよく聞くのが以下の症状です。

 ・新聞が読めない

 ・テレビを見ると辛くなる

 ・好きなはずの趣味に全く関心が湧かない

 ・友人からメールが来ても見たくない。

 ・理由もなく不安になり、涙が止まらない

 ・人ごみの中に行くと強烈な吐き気を感じる

 ・親しい友人なのに会いたくない etc

初めて上記の症状を経験する方は愕然とすると思います。今まで数十年積み上げてきた「自分」という個の人格がまるで変ったように感じるかもしれません。でも焦る必要はないのです。ゆっくりと貴方本来の能力や体力・気力を取り戻していけば良いのです。

 

次に具体的にどのようにこのステップを過ごしていくのか、について私の実体験に基づく基本的な考え方をご説明します。注意してほしいのは、この通りにトレースする必要はこれっぽっちもありません。「無理はダメ!」という基本線は維持しつつ、主治医や家族、場合によってはカウンセラーと相談しながら自分に合ったやり方で進めていくことが大事ですね。

 

具体的には、前章 STEP1「休養期」の最後ででてきた「何かやってみたい」と思ったこと、それを気負わずやってみるのがファーストステップとしてお勧めです。趣味でも散歩でも何でも良いのです。少しでも自分が楽しいと思える事、やりたい事をやってみるのが一番です。そうやって、貴方の「生きる力」回復の第一歩を踏み出しましょう。

 

ただ、そうはいっても気力&集中力&体力の低下というステータス悪化がある以上、いきなり以前のように実行することは難しいでしょう。例えば、ドラマが好きな人が久しぶりに視聴しても30分見たら疲れてしまい、見るのを止めてしまうというようなことは往々にしてあります。でもそれで構いません。辛くなったら活動を停止して寝てしまっても良いのです。今はエンジンを温める訓練を徐々に行う時期です。「歯を食いしばって頑張る」のはまだ先の話です。

また、昨日できたことが今日は全くできなくなることもよく起こります。これも気にする必要はありません。ウツの回復は一直線ではなく、上がり下がりの波があるのです。「三歩進んで二歩下がる」くらいの気持ちでいいのです。

 

※回復期については、重要なポイントがいくつもあります。本章は上記の基本的な考え方を述べたところで終了し、個別のポイントは次章に続きます。

 

以上

 

 

 

 

 

【5】<参考>休職期間の過ごし方-2(STEP1「休養期」)

それではSTEP1から見ていきましょう。

 STEP1:休養期

(目安 1~2か月)

 

休職直後の段階です。会社での業務遂行が困難なレベルであり、精神科医から「休職するべき」との診断書がでているほど精神が疲弊しているので、何も考えずに自宅のベッドで睡眠による休養をとることが必要です。

ただここで気を付けないといけないのは「ご家族(特に配偶者)の理解」です。ウツは通常の病気と異なり、肉体的な症状があまり目だたないケースが多いです。「骨が折れた、高熱が出た」というのは誰の目にもわかりやすいですが、ウツは家族から見ると「確かにしんどそうだけど、一日中、ベッドでゴロゴロしているのはちょっとどうなの…?」となりがちです。

話す余力がある時でいいので、まずは「安静状態での休養が必要である」ことをご家族に説明された方が良いと思います。主治医の診察時に配偶者も一緒に来てもらって、医師から説明してもらうのも一つの手ですね。

 

繰り返しますが、このステップのキーワードは「睡眠による休養」です。極力、仕事にかかわる思考や余計な行動は避けてください。体力を落とさないために無理に外出したり、仕事のことを考える(ex.自宅PCで会社のメールを読む等)と回復が遅くなり、結果として休職が長引くことがあります。

 

また主治医から抗うつ薬などの薬が処方されているはずです。精神系の薬を服用することに抵抗がある方が大多数だと思いますが、必ず主治医の指示通りに服用してください。ただ、抗うつ薬は非常に多くの種類があります。当ブログは薬の説明がメインではないので個々の薬の内容は記載しませんが、服用開始から3週間程度たっても「気持ちが楽になる、不安が小さくなる」等の改善効果が見られなければ主治医に相談することをお勧めします。主治医も処方の効果を見極めながら、患者にとって最適な効果を発揮する抗うつ薬を選んでくれるはずです。「薬が合わないようです」と言っても、怒る医者はいません(もしそんな医者なら速やかに転院した方が良いです)。

 

主治医診察の際は、簡単で良いので以下内容のメモを持参することをお勧めします。

 ・前回診察以後の心理状態(不安症状、身体症状を簡潔に説明)

 ・上記期間の睡眠状況(不眠などの症状は出ていないか)

 ・薬が効いているかどうか(本人の主観で結構です)

 ・その他、聞いておきたい質問事項

何故メモを持参したほうが良いのかという理由ですが、これは主治医に質問されると意外と言葉が出てこず「はい/いいえ」などの簡単な応答しかできないケースが多いからです。精神が弱っている状態で、自身の病状を説明するのは辛いものがあります。主治医としても患者の正確な状況を把握しないと適切な投薬指示ができませんよね。

加えて、一般的に診察時間の短さという点も挙げられます。「5分診療」などとよく言われますが、現在では都市部になるほど、精神科や心療内科の待合室は患者でいっぱいです。医師としてもそうした大勢の患者を捌く必要があるため、どうしても一人当たりの診察時間は短くなる傾向にあるようです。限られた時間を活用するためにも、簡単で良いので事前準備をお勧めします。

 

そのようにしてしばらく、極力何も考えないようにして「休養期」を過ごし、自分の中で僅かでも「何かやってみたい」という気持ちが出てきたら、このステップ終了のサインです。必ず主治医に相談の上、了承が得られれば次のステップ「回復期」へ進みましょう。

 

以上

【4】<参考>休職期間の過ごし方-1(STEP 1~3に分けてみる)

当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。

 

前章までの部分で私が初回の休職に至る経緯をご説明しました。いきなり重い内容で恐縮です。続きでは過去の私が「はじめての休職」をどのように過ごしたのかを振り返っていきますが、ここで一旦、お役立ち情報的なトピックスを挟みます。

大半の方にとり「休職」というのは未知の領域だと思われます。「明日から〇か月、ゆっくり自宅療養してください」と上司や人事担当者から言われて、どのようにすれば良いのか途方に暮れる方も多いのではないのでしょうか?

 

よくあるパターンとしては以下の過ごし方が多いようです。

 ●休職期間中、ずっと寝たまま療養する

 ●(ある程度、体力が回復したら)好きな映画を見たり読書をする

 ●(ある程度、体力が回復したら)図書館で資格や業務関連の勉強をする etc。

 

個人の体調やウツ症状の状況により完全にケースバイケースなので、単純にどれが正解でどれが間違っているとは言えません。そもそも「何もしたくない、何も考えられない」という方が、私自身も含め大多数だと思います。

ただ、貴方が「復職」および「ウツを二度と再発させない」というゴールを真剣に考えているならば、戦略的に休職期間を過ごす必要があるのではないでしょうか?

 

以下は私がウツ関連の多数の書籍等を参考に、自身の実体験に基づき整理した「休職~復職までのステップ」の考え方です。

これが万人に適用できるとは言いませんが一つの参考情報として気楽にご覧下さい。次からご説明する情報を叩き台にして主治医と相談しながら、ご自身の休職期間の過ごし方を考えていくことをお勧めしたいです。

 

STEP1「休養期」  (目安 1~2か月)

STEP2「回復期」  (目安 2~3か月)

STEP3「復職準備期」(目安 1~2カ月)

 

上記の目安期間はあくまで参考程度に捉えてください。それぞれの方の状況(ウツ症状・職場環境・経済的余裕など)により、上記の目安期間よりも大幅に前倒しor後ろ倒しになる場合は多々あります。「3か月」などと休職期間が決まっている場合も多いです。また、一般的に初回の休職では短く、再発を重ねるごとに長くなる傾向があるようです。

★各ステップの詳細は、次章以降でご説明します。

 

以上

【3】<体験記>たたかいのはじまり-3

そして二日後。

私は慶応義塾大学病院にて診察を受けることになりました。会社の次長が同行してくれ、タクシーで同病院を訪れました。一時間ほど待った後に精神科の医師の診察を受けました。精神科医の世界で有名な方である、と事前に聞いた気がします。

 

問診の内容は全く覚えていません。記憶にあるのは、問診の最後に、自分が焦点の定まらない虚ろな視線のまま絞り出した声で「先生、私は良くなるのでしょうか」と言ったことのみです。それに対する医師の回答が「大丈夫ですよ、必ず良くなりますよ」だったのか「完全に復調するのは難しい」的なことだったのか、ここも覚えていません。

 

診察の結果、私には「うつ病」という診断が下りました。そして「希死念慮」が強いため、即座に慶応の系列病院に入院することになりました。ここでいう希死念慮という言葉を初めて聞かれる方も多いのではないのでしょうか。これは「死んでしまいたい、死んだほうがいいのではないか等と考えること」を意味します。

 

この時点でも私の思考は事態を受け止めることを拒否していました。PCでいうところのOSがフリーズしているような感覚です。身内がいるときは食事を少し食べましたが、一人の時はただ布団で横になって天井の何もない部分をじっと見つめていました。

 

そして東京郊外のとある病院に入院しました。入院する時に色々な誓約書等にサインしました。いわゆる精神病院の閉鎖病棟です。世の中のほぼ全ての人が経験することのない世界ですね。とにかく静かに寝たかったので相部屋ではなく個室を選択しました。食事とシャワーの時以外は部屋の外に出ることなく、ただ只管に横になっていました。人生で初めて病院食を食べたのですが、塩味がほとんどせず美味しくないですね。塩なしで茹でたような鮭の切り身と、味のない味噌汁、べちゃべちゃのご飯を記憶しています。

 

漫画のドラゴンボールで「精神と時の部屋」というのが出てきますが、私の印象では、そうした世界にいるように感じていました。ただ真っ白な世界で虚無な世界です。

 

その中で一週間ほどたつと遅まきながら、自分がとんでもないことを起こしてしまったこと、会社に顔向けできないほど迷惑をかけてしまったこと、特に自身が担当していた案件でチームの上司・同僚に大きな迷惑をかけている、ということを考えていました。一度、個室で寝ていると所属部署の部長がお見舞いに来てくれたのですが、私は現実認識できずにただ、部長の顔をボーっと見ているだけでした。

 

だんだん普段の思考ができるようになり、いつまでもここにいたくない、と思いました。医師や院長と面談を重ね、数週間後に「もう希死念慮の恐れはないだろう」ということで退院することができました。会社からは「すぐに職場復帰は無理だろうから、しばらく自宅療養(精神科へ通院しながら)するように」との指示がありましたので、その通りにさせていただくことになりました。

 

そして初回の休職(自宅療養)が開始します。

【2】<体験記>たたかいのはじまり-2

2011年1月下旬のとても寒い朝のことです。

窓から、白く柔らかい日差しが差し込んでいた記憶があります。

 

前夜、不眠が酷くほとんど眠れていない状態でしたが「会社に行かないと…」と重たい身体を無理やり起こして顔を洗いました。そしてワイシャツに着替えてネクタイをしようとしたのですが、その瞬間、「不出来な自分は会社に行ってはいけない」という強い感情の奔流が生じ「無能な自分を罰しなければいけない」という思考が爆発しました。

 

気が付くと、私は自身の身体を刃物で傷つけていました。不思議と痛みは感じずに、夢の中にいるような他人事のような感覚でした。

 

それからの記憶は途切れ途切れになります。自分で救急車を呼んだのだと思いますが、よく覚えていません。救急から連絡されたのでしょう、刑事の方も来られていました(後で知ったのですが、事件性の有無を確認する必要があるのでこうした場合は警察がこられるのです)。事情を聞いた刑事さんが悲しそうな顔で「こんなことをしても何の解決にもならないよ」と言ったことを朧げながら覚えています。

 

私はすぐに救急病院に搬送されました。道路を走行中、救急車がガタガタ揺れていました。傷を縫合してくれたのは女性医師でしたが、手術後に彼女から「30針以上は覚えていません!」と強い口調で叱られました。ただ内臓に達するような深い傷はなし、とのことでした。手術室を出ると警察から連絡があったとのことで所属部署の次長が2名来ていました。何か会話したはずなのですが、ここの部分は記憶が抜け落ちています。

 

記憶にある次の場面は、自宅に戻ってベッドの上に横たわっていたことです。次長が傍についていてくれました。数時間ほどして身内が駆けつけてくれて、その日は終わりました。

この件に関わったすべての人に途方もない迷惑と心配をかけ心底申し訳ないのですが、その時の私は「これでようやく眠れる…」と変な安堵感を感じていました。完全に思考が破綻していたのです。

 

<追記>

自傷行為は絶対やってはいけないのですが、ここではあえて記載しました。こうなる前に心療内科・精神科などに通院しておくべきでした。この行為は実際の傷の大小に関わらず身近な人・大切な人に心配させてしまい、そしてその後の自分自身にも大きな暗い影を落とします。

どんな理由をつけても良いです、そうした思いが少しでもある人は絶対に思いとどまってください。愚かな行為を繰り返してしまった私の心からのお願いです。

【1】<体験記>たたかいのはじまり-1

「ウツになるのはメンタルが弱い人だ。自分には関係ない」

 

順風満帆な人生を送っていて、そう思う人は多いと思います。私もかつては無邪気にそう考えていました。でも、ウツは生き物の本能である「危機回避セキュリティ」が発動している状態なので、条件と環境を満たせば誰だって起こる可能性はあるというのが私の実感です。

 

これから6年間に及ぶ「ウツとのながいたたかい」を書いていきますが、まずはウツになる前の状態から始めます。

 

私は2001年に、とある銀行に入社しました。リテール営業を経て希望していたIT部門に5年目に異動。開発の上流〜下流工程や大型プロジェクトなどを経験し、とても充実した仕事だと感じていました。仕事量はかなり多く連日22~23時まで残業していました(週末は次の日が休みなので翌日2時まで残業していた時期もあります)。それでも特に不満はなく、ドッタンバッタン大騒ぎしながらも周囲と上手くコミュニケーションしながら働いていました。仕事の愚痴は同僚と飲んで発散して一晩寝たら次の日にはすっかり忘れて元気に働く、そんな日々がいつまでも続くものだと信じていました。

 

転機は人事異動でした。これまで経験のない部署に配属されたのですが、当時は会社の合併を数年後に控え、部門全体が空前の忙しさでした。その戦場のような雰囲気の中で新しい仕事に取組みました。当然、分からないことも多いので上司や周囲に確認・相談しながら進めていたのですが、いつからかそうした相談をすることに徐々に抵抗をおぼえるようになりました。「自分はひょっとしたら無能ではないか」「多忙を極めている同僚に質問するのは嫌がられているのではないか」…etc、etc。最初は軽く頭の隅をかすめる程度の思考でしたが、日増しに不安の萌芽は大きくなっていきました。

 

そうなると今度は仕事が手につかなくなり、以前では考えられないようなケアレスミスが増えていきました。そうした失敗が一層自分を責める感情・思考につながっていく負のスパイラルですね。そのような中で、私は新たにある案件を担当することになりました。納期に余裕がない中で自分なりに努力しましたが、なかなか芳しい結果がでない状態が続きました。

 

不眠が始まりました。

 

身体が重い、帰宅したらすぐ寝よう。そう思っているのに、いざ横になると、仕事のことが頭から離れず、眠れないのです。不眠は徐々に酷さを増して、日中も頭が朦朧とするようになっていきました。

 

そして、その時が来ます。2011年1月下旬のとても寒い朝でした。

 

※ご注意!※

私のウツ経験を語るうえで「自傷行為」は避けて通れないトピックです。次章ではその記載がでてきますが、一般向けのブログなので表現は極力、問題のないレベルにとどめます。ただ、そうした話が苦手な方は読み飛ばしていただくことを推奨させていただきます。